平滑ニッケルめっきとは、表面に凹凸のない、非常に平滑なニッケルめっきです。
前回、平滑ニッケルめっきは超高光沢銀めっきの下地として有用であることをご紹介致しました。
下地のニッケルめっきが平滑な表面であることによって、高価なパラジウム、金の付着量を削減することができる、
ということをご説明させていただきます。
                                                            
                                                        
                                                                                
                                                                            ■ニッケル上の銀めっきに必要不可欠な理由
LED用のA銀めっきの場合、素材のリードフレームには銅が用いられます。
銅の上に直接銀めっきをつけると、銅が銀の中に拡散してしまい、光沢度が落ちるという現象が起きます。
銅の拡散を防止するため、バリア層としてニッケルめっきをつけます。
ニッケルめっきはすぐに強固な酸化皮膜を作ってしまうため、直接銀めっきをつけようとしても密着が悪く、剥がれてしまいます。
そこで、ニッケルめっきの上にパラジウム、金めっきを薄くつけ、その後銀めっきをつけます。
すると密着よくめっきすることができるのです。
こうして、銅の拡散を防ぎつつ、ニッケルめっきの上に銀めっきをつけることが可能になるのです。
※注記
ニッケルめっきの上なら金めっきだけでも密着よくつけることができるのですが、その場合、金の膜厚を厚めにつけなければなりません。
パラジウムあり → 金膜厚 約0.03μm
パラジウムなし → 金膜厚 約0.2μm
金より高価なパラジウムですが、薄くめっきすることで(パラジウムの膜厚は0.018μm程度)金のみの場合よりコストを抑えることができるのです。
■パラジウム、金の価格
パラジウムも金も貴金属です。ご存じの通り、両金属とも非常に高価です。
金の価格は 約4950円/g
パラジウムの価格は 約5420円/g (2019年7月現在)
金もパラジウムも日々価格が変動しますので、今後もっと高くなる可能性はあります。
めっきに必要不可欠と分かっていても、できるだけ使用量を減らしたいものです。
                                                            
                                                        
                                                                                
                                                                            表面が粗いと、表面積が大きくなります。
よって、均等に膜厚をつけようとすると、表面が粗い方がより多くの金属分が必要となります。
                                                            
                                                                                                                    
                    
                                                                            ただ注意すべき点があります。
蛍光X線で膜厚を測定する際、測定されるのはコリメータ径の中に付着している金属量であるということです。
つまり、表面に均一にめっきの粒子がついていたとしても、径の中により多く金属が付着していると、膜厚が厚く測定されるのです。
上図の場合、平滑なニッケル被膜より、粗いニッケル被膜に付着しているパラジウム粒子の量が多いので、膜厚が厚く測定されます。
では、同じ膜厚=同じパラジウム粒子の付着量にするにすると下図のようになります。
                                                            
                                                                                                                    
                    
                                                                            粒子の大きさを一定であると仮定した場合の図になります。
表面積が大きい分、同じ金属量にしようとするとかなり隙間があいてしまいます。
これでは密着不良を起こしてしまいます。
                                                            
                                                        
                                                                                
                                                                            まとめると、以下になります。
①均一にパラジウムをめっきした場合
 粗いニッケル被膜  → より多くのパラジウムが必要。
 平滑なニッケル被膜 → 粗いニッケル被膜より少ないパラジウムで足りる。
②膜厚を同じにした場合
 粗いニッケル被膜  → パラジウムで覆いきれず、密着不良の原因となる。
 平滑なニッケル被膜 → 均一に覆うことができる。
下地のニッケルめっきを平滑にすることで、粗い場合よりパラジウム、金の金属量を削減することができるのです。
また、粗い被膜より均一なパラジウム、金被膜をつけることができるので、より良い品質に繋がります。
平滑Niめっき上の超高光沢銀めっきにつきましては、少量試作を承っております。
ご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。