粗化ニッケルめっきに関しまして今回は『密着強度』について書かせて頂こうと思います。
密着強度とは、文字通り「くっついて離れない力」です。
めっきだけでなく、接着剤やテープ、はんだなどの分野でも重要とされている規格なのではないでしょうか。
試験方法は分野によって様々あり、目的によって使い分けされています。
例えば、素材とめっきの密着性を測定する場合、
テープ試験(テープをめっきに貼って剥がす → 剥がれないか見る)
曲げ試験(めっきをつけた素材を90°曲げる → 曲げ箇所に亀裂がないか見る)
ピール試験(めっき皮膜を剥がしす → 剥がすのにかかった力を測定する)
などなど、他にもたくさんあります。
しかし今回は、素材とめっき間の密着強度ではなく、
粗化ニッケルめっきに樹脂をくっつけて、どれだけ離れないか!というお話です。
粗化ニッケルめっきは表面が非常に粗いめっきです。粒子がとげとげしています。
樹脂との密着性が良いというのは、粒子の隙間に樹脂が入り込むからなのです。
これをアンカー効果といいます。アンカーとは船の錨のことです。
カップシェア試験 プリンカップ試験とも言います。
①めっきをつけた板の上に、樹脂をプリン型に成型。
②横から一定の力で樹脂を押し、樹脂が取れるまでにかかった力を測定する。
強度の単位はkg、またはMPaで表されます。
樹脂との密着強度が高ければ、より強い力がかかります。
その力を重さ(kg)や圧力(MPa)として表します。
試験のイメージ図です。ホットプレートで加温しながら樹脂を成形します。
今回の試験ではエポキシ系の樹脂を使用しています。
実際の試験片はこのようなものです。
めっき面と接している部分の樹脂の直径は4mmですので、非常に小さいです。
めっき条件
粗化ニッケルめっき 2μm
無光沢ニッケルめっき 2μm
ニッケルめっきにワイヤーボンディングする場合、パラジウムと金めっきをつけるのが一般的なので、ニッケルの上にパラジウムと金をめっきしたものも作成し、テストしました。
結果はこのようになりました。
数値が出ていないのは、樹脂との密着が悪く、すぐに取れてしまって測定できなかったものです。
素材である銅板、無光沢ニッケルめっきには樹脂はつきませんでしたが、粗化ニッケルめっきをつけたサンプルでは、18MPaもの力に耐えたということです。
つまり、粗化ニッケルめっきに樹脂をくっつけると、こんなにも離れない!すごい!!
粗化ニッケル/パラジウム/金めっきが粗化ニッケル単体よりも強度が落ちるのは、おそらく粗化ニッケルめっきの粒子をパラジウム/金めっきが埋めてしまったのではないかと推測されます。
また、無光沢ニッケル/パラジウム/金めっきが無光沢ニッケル単体よりも強度があるのは、樹脂と接触する金属種が金なので、密着性が変化したのではないかと考えております。
粗化ニッケルめっきと樹脂との密着強度を測定し、改めて樹脂との密着性がいいということがわかりました。
パラジウム/金めっきをつけても密着性はある程度保たれているので、パッケージ樹脂との密着性をあげることができ、またワイヤーボンディングもきちんとつくということになります。
・より樹脂との密着性を重視している。
・現在普通ニッケルめっき後にエッチングで表面をあらしている。
というような方には、より強い密着性と、エッチング工程をなくすことによるコストダウンが可能になりますので、非常におすすめできるめっきです。
ただ、樹脂との相性がありますので、どんな樹脂とでも密着性がいいとは言い切れません。実際に密着性のテストをしてみなければわからないものではあります。
どのようなものか実物を見てみたい、または試作をしてみたいと思われましたら、お問い合わせフォームよりご連絡下さい。
宜しくお願い致します。