電解ニッケル-リンめっきは、リンを8~14w%程度共析させたニッケルめっきです。
リンの共析率は調整することが可能です。
リンが共析することで被膜が緻密になって硬くなり、耐食性が向上します。
下地としてめっきすることで、熱をかけた時に素材が表面まで拡散するのを防ぐことができます。
また無電解のニッケル-リンめっきよりも液寿命が長く、コストを低く抑えられます。
電解ニッケル-リンめっきは光沢のある外観をしています。
SEM画像を見ていただくと、無光沢ニッケルめっきにはツブツブとした粒子が見えますが、
電解ニッケル-リンにはそういった粒子が見られません。電解ニッケル-リンめっきの被膜は
アモルファスと言い、粒子の境目(粒界)のない状態だからです。
金属の腐食や拡散はこういった粒界に沿って発生します。
粒界のない電解ニッケル-リンめっきは腐食が起こりにくいため耐食性に優れます。
また拡散を防ぐ効果もあり、下地のめっきとして使用されます。
耐食性を比較するため、塩水噴霧試験を行いました。
JIS Z2371 または H8502に基づいております。
試験条件
塩水噴霧試験器 STP-30(スガ試験機株式会社)
塩化ナトリウム濃度:50g/L
温度:35℃
時間:24時間
素材の鉄材は全面錆びて腐食しています。
電解ニッケル-リンめっきは一部、破断面や塩水がとどまったであろう箇所に錆が見られました。
無光沢ニッケルめっきは複数個所の破断面に錆が見られます。
錆の発生した範囲を見ると、電解ニッケル-リンめっきは無光沢ニッケルめっきより耐食性があると言えます。
電解ニッケル-リンめっきの特徴として、硬いことが挙げられます。
一般的な無光沢のニッケルめっきの硬さが360~400Hv程度であるのに対し、
電解ニッケル-リンめっき(リン濃度15w%)の硬さは約540Hvあります。
下の表は、電解ニッケル-リンめっき、無光沢ニッケルめっき、半光沢ニッケルめっき、無電解ニッケルめっきの
硬度を測定し、比較したものです。
測定条件
測定機器:HMV-G 島津製作所 微小硬度計
測定条件 :HV0.1荷重(980.7mN) 保持時間10sec
また、一般的な電解めっきは熱をかけると粒子が動いて被膜の応力が小さくなるため硬度が落ちます。
一方、電解ニッケル-リンめっきはより硬くなります。これは無電解ニッケルめっきでも起こる現象です。
アモルファス構造だったニッケルとリンが結晶化することで、被膜が硬くなります。
電解ニッケル-リンめっきのサンプルに200℃2時間熱をかけると約590Hvまで硬くなり、400℃2分熱をかけると約1000Hvまで硬くなりました。
しかし注意が必要なのが、硬すぎると脆くなる点です。
被膜が硬いと、曲げ加工した際に被膜にクラックが入ったり、剥がれたりしてしまいます。
無電解と電解の違いを簡単に説明すると、ニッケル-リンが析出する方法が違います。
無電解は化学反応によってニッケルが析出するのに対し、電解は電気を流すことによってニッケルが析出します。
無電解は液中で化学反応が起こるので、液の成分の組成やpHが常に変動します。随時補充や補正を行いますが、
徐々に不純物が溜まってくるので、ニッケルが一定の析出量に達すると液をすべて取り換える必要があります。
一方電解では、組成やpHの変動があり補充や補正をするのは同じですが、きちんと液の管理を行えば、
かなり長期間にわたって使用することが可能です。
また無電解は液の温度が高く、90℃で使用します。そのため専用の槽や設備が必要となりますが、
電解では無光沢ニッケルめっきなどと同じ設備、温度で使用できるため、特別な設備がいりません。
設備の導入費や光熱費を低く抑えることができます。
このようなことから、電解ニッケル-リンめっきは無電解ニッケルめっきよりも低コストで使用することができます。
電解ニッケル-リンめっきについてご紹介しました。
電解ニッケル-リンめっきは一般的なニッケルめっきよりも被膜が緻密で硬いです。
塩水噴霧試験の結果から、耐食性も良好であることがわかりました。
下地としてめっきすることで、熱をかけた時に素材が表面まで拡散するのを防ぐことができます。
また無電解のニッケル-リンめっきよりも液寿命が長く、設備も簡易でよいことから、導入コストや管理コストをを低く抑えられます。
電解ニッケル-リンめっきつきましては、少量試作を承っております。
ご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。